魚もそうですがイカの呼び名は、本当に難しいですね。若狭地方でマイカと呼ばれイカと北海道でマイカと呼ばれているイカは同じものでしょうか？答は「いいえ」です。 若狭地方のマイカはケンサキイカですが、北海道のマイカはスルメイカのことです。マイカの「ま」は真のこと、このイカこそ真のイカなり、ということからマイカという呼び名が生まれたといわれています。 ただ、真のイカなりという理由は、その地方で最も水揚げが多く漁業に貢献していることから名付けられたものが多く、昔から若狭地方ではケンサキイカが、 北海道ではスルメイカの水揚げが多かったことから、どちらもマイカと呼ばれるようになったのです。

　若狭地方では、これから秋にかけてがマイカ釣りのベストシーズンです。マイカの産卵期は4月から10月と長期に渡るのが特長で、いま釣れているマイカには2つのタイプがあります。 胴長が30cmを超える大型は、去年の夏生まれのもの、胴長15cm前後の小型は、今年の春に生まれた新子です。もちろん数が釣れるのは新子ですが、今年は新子に交じって産卵前の大型がよく釣れるのが特長でしょう。 イカの寿命は1年。魚よりも成長が早い生き物ですから、一潮ごとに大きくなり、春生まれの新子でも秋口には胴長20cm以上になって、イカ独得の強い引きが楽しめるようになります。　 出かけるなら今。闇夜周りがベストですが、それが無理なら曇り空か小雨が降る日、雨はイヤですが、そんな日ほどよく釣れるのです。

　山陰地方や但馬海岸ではシロイカ、南紀ではアカイカ、九州ではゴトウイカ、関東ではマルイカ、そして若狭ではマイカ。これすべてケンサキイカの呼び名です。地方によってこれだけ呼び名が変わるイカも珍しいでしょう。 ケンサキイカは、胴の先端が剣のように尖っていることから生まれた呼び名ですが、ケンサキイカよりさらに胴が細いことから、剣よりも細いのは槍というわけで、同じ仲間であるヤリイカの呼び名が生まれたともいわれています。 耳と呼ばれるヒレがスルメイカは三角ですが、菱形をしているのが特長です。

　若狭地方でマイカと呼ぶケンサキイカは、青森県以南の太平洋側と日本海側に分布するイカですが、特に多いのは九州西岸や五島列島の周辺です。九州でこのイカをゴトウイカと呼ぶのは、昔から五島列島周辺でたくさん取れたためでしょう。 産卵は春から秋と長期に渡るため、春生まれ、夏生まれ、秋生まれの群れに分かれますが、寿命は一年なので、去年の夏から秋に生まれたものは、そろそろ産卵期に入り、産卵を終わったものから寿命を全うしていきます。オスはメスより大きくなり、胴長40cm近くまで成長しますが、メスは大きくても胴長30cm程度、そのかわり胴が太く丸いのが特長です。関東でマルイカと呼ぶのは、このようなメスの特徴を捉えたものです。 身は軟らかくて甘く、どんな料理にも向きます。アオリイカと並び称されるイカの王様でしょう。